稼働率とは
稼働率とは、システムがどのくらいの時間稼働しているかという割合です。
稼働率が高いほど故障が少なかったり、修理の時間が少なかったりしており、正常に稼働している時間が長いことを表しています。
稼働率を計算するときに使用するのは、次の二つの時間です。
MTBF=正常に稼働している時間
MTBF(Mean Time Between Failure)は、直訳すると故障と故障の間の時間、つまり正常に稼働している時間です。
故障という単語が入っているため少しだけ紛らわしいですが、あくまで正常に稼働している時間のことなので、注意してください。
このMTBFが長ければ長いほど正常に稼働している時間が長いということなので、稼働率も高くなります。
MTTR=正常に稼働していない時間
MTTR(Mean Time To Repair)は、直訳すると修理にかける時間、つまり正常に稼働していない時間です。
具体的には、故障中で使えない時間や修理中の時間が含まれています。
このMTTRが短いほど稼働率は高くなり、MTTRが長いほど稼働率は低くなります。
稼働率の計算(一つの装置の稼働率)
稼働率とは、システムがどのくらいの時間稼働しているかという割合です。
計算方法としては、全体の時間(稼働している時間+稼働していない時間)の内、稼働している時間の割合なので
という式になります。
なぜこの計算式になるかつまづく方もいるようなので、少し詳しく解説していきますね。
イメージで覚える
先の計算方法につまづく方は、分母と分子にそれぞれ何が入るのかでこんがらがっているようです。
分かりやすく例えるために例題を出しますね。
整理すると、一日の中では寝ている時間(6時間)と、寝ていない時間(8時間+10時間)があります。
そしてその両方を合わせて一日(24時間)になってるわけですね。
そのため、答えは寝ている時間(6時間)÷ 一日の時間(24時間)で、割合は1 / 4(四分の一)になります。
ポイントは、分母には寝ている時間だけではなく寝ていない時間も合わせた数が入るということです。
全体の中での割合を知りたいときは、分母には全体の値が入るわけですね。
さて、稼働率の話に戻りましょう。
稼働率は全体のうち、どのくらい稼働しているかを知りたいので、同様に計算します。
分母には全体の値(稼働している時間(MTBF)+稼働していない時間(MTTR))が入ります。
分子には求めたい値を入れるので、稼働している時間(MTBF)が入ります。
結果として、計算式は
になるわけですね。
稼働率の計算(複数の装置の稼働率)
さて、今まで学んできたのは、一つの装置の稼働率の計算方法です。
しかし実際のシステムでは、いくつもの装置が組み合わさって作られています。
なのでここからは、複数の装置が組み合わさった場合のシステムの稼働率を求めていきましょう!
複数の装置が組み合わさった場合、装置のつなぎ方によって計算方法が変わります。
装置が直列につながれている場合
装置が直列につながれているとは下の画像のようなイメージです。
このシステムが稼働するためには、装置Aと装置Bの両方が稼働している必要があります。
イメージでいうと、例えばテレビだと、装置Aは映像、装置Bは音声などになりますかね。
ご存じのようにテレビでは、映像と音声が両方とも出ていないと正常に稼働しているとは言えないですよね。
そんな感じで装置が直列につながれている場合、システムが正常に稼働するためには、装置Aと装置Bの両方が稼働している必要があるのです。
装置が直列につながれているシステムの計算方法
それでは、実際の計算問題を見てみましょう。
この場合、システムが直列につながれているので、システム全体が稼働するためには、装置Aと装置Bの両方が稼働していなければなりません。
今回、装置Aと装置Bの稼働率は90%なので、それぞれの装置は90%の確率で正常に稼働し、10%で故障します。
上の図より、システム全体の稼働率は 90%×90%=81% となることが分かります。
直列につながれているシステムの場合は、Aが稼働しているかつ、Bが稼働しているなので、掛け算をすればいいのです。
計算方法さえ理解してしまえば問題なく解けますよね。
ちなみに、実際の問題では、アルファベットを用いた計算が出題がされます。
そちらの解説もしていきますね。
アルファベットを用いた計算方法
この場合も今までと同様に装置Aの稼働率×装置Bの稼働率で求められます。
そのため、答えは a×b=ab となりますね。
装置が並列につながれている場合
装置が並列につながれているとは下の画像のようなイメージです。
これは、デュアルシステムやデュプレックスシステムのように、
片方の装置が止まってしまった時でも、代わりになる装置が準備してあるシステムのことを言います。
つまり、装置Aか装置Bのどちらか一方でも正常に稼働しているなら、システムは正常に稼働できるということです。
とても心強いシステム構造ですよね。
次は、詳しい計算方法を説明していきます。
装置が並列につながれているシステムの計算方法
先ほども述べた通り、装置が並列につながれているシステムでは、どれか一つでも装置が稼働していればいいのです。
言い換えると、全部の装置が故障していなければ稼働しているということです。
そのため並列な場合の計算方法は、全体から全部の装置が故障している確率を引くのが一般的です。
それでは問題を見てみましょう!
先に記載した通り、並列につながれたシステムでは、全体から全部の装置が故障した場合を引きます。
記載した計算方法で求めていきましょう。
①稼働率から、一つの装置が故障する確率を求める。
装置A、装置Bがともに90%の稼働率なので、故障する確率は100%から90%を引いて10%になります。
②すべての装置が故障する確率を求める
上記の装置がすべて故障する確率は、下記イメージのようになります。
上記のように、両方とも故障している確率は 10%×10%=1% になります。
③100%から全ての装置が故障している確率を引く。
最後に、今求めた確立を100%から引けばいいので、答えは 100% – 1% = 99% となります。
どうでしょうか?計算方法さえわかれば簡単ですよね。
これがアルファベットになると少し紛らわしくなるのですが、それでもこの計算方法を使えば簡単ですよ!
アルファベットを用いた計算の方法
並列のアルファベットを用いた問題の場合、答えが少し複雑になるんですよね。
そのため、ゆっくり手順通りに解いて、こんがらがらないようにしてくださいね。
①稼働率から、システムが故障する確率を求める。
装置Aの稼働率がaなので、故障率は「1-a」(1は100%という意味)
装置Bの稼働率はbなので、故障率は「1-b」になります。
②すべての装置が故障する確率を求める
続いて、装置A装置Bともに故障する確率を求めます。
これは装置Aが故障しているかつ装置Bが故障しているということなので、
(1-a)×(1-b)=(1-a)(1-b)が答えとなります。
ポイントですが、この(1-a)(1-b)は、装置Aと装置Bが両方とも故障した確率だということを見失わないようにしてください。
③100%から全ての装置が故障している確率を引く。
最後に、1から装置Aと装置Bが両方とも故障した確率を引けばいいので、
答えは1-(1-a)(1-b)となります。
ちょっと計算結果があっているか不安ですよね。
自分で計算して解けるようにしておくと安心できます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
システムの稼働率を求めるときは、いろんな場合分けが必要なので、少し手間取るかもしれません。
是非、MTBF、MTTRの意味、直列と並列の計算方法を整理しておいてください。
練習問題
問題1
MTBFとMTTRに関する記述として,適切なものはどれか。
(平成27年度 秋期 問14から出題)
ア、エラーログや命令トレースの機能によって, MTTRは長くなる。
イ、遠隔保守によって,システムのMTBFは短くなり, MTTRは長くなる。
ウ、システムを構成する装置の種類が多いほど,システムのMTBFは長くなる。
エ、予防保守によって,システムのMTBFは長くなる。
答)エ
MTBFは正常に稼働している時間、MTTRは正常に稼働していない時間です。
予防保守によって、事故などが起こらないようにすれば正常に稼働する時間が長くなるので、MTBFは長くなります。
問題2
稼働率が最も高いシステム構成はどれか。ここで,並列に接続したシステムは,少なくともそのうちのどれか一つが稼働していればよいものとする。
(平成27年度 春期 問15より出題)
ア、稼働率70%の同一システムを四つ並列に接続
イ、稼働率80%の同一システムを三つ並列に接続
ウ、稼働率90%の同一システムを二つ並列に接続
エ、稼働率99%の単一システム
答)イ
ア、稼働率は、故障率が30%の装置が4つ全て故障する確率は30%×30%×30%×30%で0.81%です。そのため、稼働率は100%-0.81%で99.19%です。
イ、稼働率は、故障率が20%の装置が3つ全て故障する確率は20%×20%×20%で0.8%です。そのため、稼働率は100%-0.8%で99.2%です。
ウ、稼働率は、故障率が10%の装置が2つ全て故障する確率は10%×10%で1%です。そのため、稼働率は100%-1%で99%です。
エ、稼働率は99%です。
したがって、一番稼働率が高いのはイで、99.2%です。
問題3
MTBFが21万時間の磁気ディスク装置がある。この装置100台から成る磁気ディスクシステムを1週間に140時間運転したとすると,平均何週間に1回の割合で故障を起こすか。ここで,磁気ディスクシステムは,信頼性を上げるための冗長構成は採っていないものとする。
(平成25年度 秋期 問14から出題)
ア、13
イ、15
ウ、105
エ、300
答)イ
まず、「冗長構成は採っていない」より、このシステムは直列のシステムです。
また、MTBFが21万時間より、磁気ディスク装置は21万時間ごとに故障する装置です。
言い換えると、21万時間稼働させれば、100個の装置すべてが故障する計算になります。
21万時間を100個の装置で平均的に割ると、21万時間÷100個=2100時間に一つの割合でどれか一つの装置が故障することになります。
直列のシステムは一つでも装置が故障するとアウトなので、2100時間ごとにシステム全体が停止してしまいます。
あとは、1週間に140時間動かすので、2100÷140=15週間で故障する計算になります。