はじめに
皆さんは、IT企業がどんな仕事をしているかご存じですか。
一言でIT企業と言っても、実は様々な企業があるんです。
そこで今回は、IT企業の中でも特に「SIer」と呼ばれる、クライアントに対してシステムを作っている企業についてご説明します。
IT業界に興味がある方は是非ご覧くださいね。
SIerとは
SIerとは、クライアント向けにシステムを開発・運用することで、クライアントの要望を叶えてあげる企業のことです。
ファミレスを例にとって考えてみましょう。
例えばファミレスが、「営業中の従業員を減らして人件費を削減したい」と考えているとします。
そんなクライアントに対して、SIerは「タッチパネルで注文できるシステムを開発する」などを提案します。
注文をタッチパネルで行うことができれば、従業員の仕事は減るので、従業員を減らすことができますよね。
こんな感じで、システム開発を通してファミレスの要望をかなえてあげるのがSIerです。

SIerはさらに以下の3種類に分けられます。
1.メーカー系SIer
2.独立系SIer
3.ユーザー系SIer
メーカー系SIer
一つ目はメーカー系SIerです。
メーカーとは自社でIT製品の設計から製造までを行う企業のこと
メーカー系SIerとは、親会社にメーカーとなる企業をもつSIerのことです。
特徴:親会社が受注した案件の下請けが多い。
親会社の方針の影響を大きく受ける。
例 :NECネッツエスアイ、日立システムズ、
パナソニック システムソリューションズジャパン など
メーカー系SIerは親会社が受注した案件の下請けになることが多く、
親会社からの信頼が強い分大きなプロジェクトになることが多いです。
また、親会社から案件がもらえるという点で後に出てくる独立系SIerと比べて
将来が安心という特徴もあります。
しかし親会社の方針に逆らえないという特徴もあり、企業合併やビジネス戦略のような
親会社の影響を大きく受けるというデメリットもあります。
独立系SIer
二つ目は独立系SIerです。
独立系SIerは特定のベンダーに依存しないSIerです。
そのため様々なベンダーの中から最適な製品を選択することができます。
また親会社をもたない企業が多く、もっていたとしても独立性を維持しています。
特徴:使用するベンダーを自由に選択できたり、複数のベンダーを組み合わせたりすることができる。
親会社がないため案件の受注が安定しない。
例 :アクセンチュア、システナ
先ほども述べた通り、独立系SIerの特徴はなんといっても縛りがないことです。
親会社からの圧力がなかったり、特定のベンダーの製品を使用する縛りもないので、
自由に最適なソリューションを選ぶことができます。
しかし、親会社がないため案件の受注が安定しないというデメリットもあり、市場の影響も受けやすいです。
ユーザー系SIer
三つ目はユーザー系SIerです。
ユーザー系SIerは、もともとは通信・金融・インフラなど、IT業界以外の企業の情報システム部門やIT部門だったものが独立したものです。
親会社やグループ会社から依頼を受け、システム開発や運用を行うことが多いですが、
その経験を活かして外部のシステム開発を行うこともあります。
システム開発を行う際、実際に製造をしたりテストをする工程は二次受け企業以降に任せることが多く、
主に要件定義や基本設計などの上流工程を行います。
特徴:IT業界以外の大企業を親会社に持つ。
上流工程を担当することが多い。
例 :NTTデータ、野村総合研究所など
まとめ
このように、SIerは使用するベンダーやクライアントで3種類に分かれています。
それぞれの企業で仕事内容やクライアント(お客さん)が異なるため、就職するときは自分がやりたいことを決めてから挑むといいですよ!
SIerの構造
さて、ここからはSIerのもう一つの特徴、一次受けと二次受けについてご説明します。
一次受けと二次受け
先ほども述べた通り、SIerはシステムを開発することでクライアントの要望を叶えています。
しかしシステムの規模が大きくなると、自社だけで人員やノウハウを賄えなくなることもあるんですね。
そんな時にSIerは、他の企業に求人を出してそのプロジェクトの間だけ、
自分たちの企業の従業員として一緒に働いてもらうことがあるんです。
これがSIerによるシステム開発です。
そしてその際、クライアントから直接システム開発の依頼を受けた企業を一次受け企業、
一次受け企業の求人に応募し、一次受け企業の一員として参加する企業を二次受け企業と言います。

一次受け
一次受け企業は、クライアントから直接システム開発の依頼を受ける企業です。
実際の開発作業自体は二次受け以降の企業が行うことが多いため、
どちらかというと管理者のような仕事をしています。
具体的な仕事内容としては、プロジェクト全体のスケジュール管理、クライアントとの交渉、
二次受け以降の企業が製造した成果物のレビューなどです。
メリット
・直接顧客とコミュニケーションをとるので顧客に要望を出しやすい
・収益が高い。
一次受け企業の特徴は、クライアントと直接やり取りをする点です。
そのため、仕様やスケジュール感などの要望を出しやすいんですね。
収益に関しては後程詳しく説明します。
デメリット
・責任が集中する。
一次受け企業のデメリットは責任が集中する点です。
一次受け企業はプロジェクトの管理や成果の責任をおっているため、
最終的な責任や意思決定は一次受け企業が行います。
また、クライアントはあくまでも一次受け企業にシステム開発を依頼しているため、
プロジェクトが失敗すると一次受け企業の評価に直結します。
二次受け
二次受け企業は、一次受け企業の求人に応募してプロジェクトに参加する企業です。
そのプロジェクトに参加しているときは一次受け企業の一員として参加し、作成した成果物も「『一次受け企業』作」として提出するため二次受け以降の企業の名前が表に出ることはありません。
具体的な仕事内容としては、実際に設計書を作成したりシステムを製造したりすることで、
一次受け企業に割り振られた担当部分の作業を請け負います。
メリット
・自分たちの専門知識を活用できる
・責任の範囲が自分たちの担当部分のみ
二次受け企業のメリットは仕事内容です。
二次受け企業が行うのは実際のシステム開発作業です、そのため自社の強みを活かしやすいんです。
例えばメーカー系SIerが二次受け企業として入ったらそのメーカーの知識を存分に発揮することができますし、
独立系SIerが二次受け企業として入ったら数々のプロジェクトに参加してきたノウハウを活かすことができます。
また、一次受け企業とは違いプロジェクト全体に対して責任を持つことはなく、
自分たちの成果物に対してのみ責任を持てばいいこともメリットの一つです。
デメリット
・収益が低い
この点については、一次受け企業と同様に後程説明しますね。
この後さらに三次受け以降の企業も存在しますが、責任の範囲が狭くなり、収益性がどんどん下がっていきます。
収益性について
さて、ここまでのメリット/デメリットの中に収益性という言葉がたびたび登場してきました。
次はそこを詳しく説明していきます。
そのためにまずSIerの契約形態についてお話しさせてください。
SIerでシステム開発を行う際、その金額は「エンジニア一人当たり○○円」という形で
決まっていくことが一般的です。
例えばクライアントが一次受け企業に依頼する場合、
「一人100万円で100人分、合計1億円支払う」というイメージですね。
そして一次受け企業が二次受け企業に仕事を依頼する際、
その100万円から一部を渡して仕事を依頼することになります。

例えば100人中、10人を自社の社員で調達して残り90人を他の企業から調達するとします。
その際、一次受け企業は少し中抜きをして「エンジニア一人当たり90万円」という求人を出します。
一次受け企業は「エンジニア一人当たり100万円」という条件で仕事を受けていますから、
結果として同じエンジニア一人でも一次受け企業と二次受け企業では給料が異なるという状況になります。
三次受け企業以降も同様です。
「一人当たり90万円」で契約を受けた二次受け企業は、
同様に「一人当たり80万円」という条件で求人を出し人材を確保します。
これが、二次受け三次受けのデメリットである、「収益性が低い」ということです。
全く同じ仕事をしていても何次受けかによって給料が違うということになるんですね。
また、同じことは納期にも当てはまります。
一次受け企業が「1か月間」という納期をクライアントからもらっているとき、
二次受け企業には「25日間」という納期で伝達します。
同様に二次受け企業は三次受け企業に「20日間」という納期で伝達し、開発を行ってもらいます。
その結果、請負を重ねるにつれて納期は厳しく、給料は安いということになってしまいます。
これがSIerのシステム開発の現状なんですね。

ちなみに、一次受け企業や二次受け企業が発生する理由としては、「自社だけでは人材を賄いきれないから」や、「より専門知識を持っている人に作業をお願いしたいから」というものがあります。
特定のメーカーの製品を使用してシステムを開発するときはそのメーカーの有識者にプロジェクトに参加してほしいですし、数々のプロジェクトを渡り歩いてきた人に協力してもらうことで実現可能性や他の現場のノウハウなどを教えてもらうことができます。
もしIT企業に就職したいと考えている方は、何次受けかを気にしてみるといいと思いますよ!
まとめ
いかがだったでしょうか。
IT企業について少しわかっていただけましたでしょうか。
次は「実際システム開発ってどんなことをしているのか」についてご説明しますので、
良ければ一緒にご覧くださいね。